ペルソナ4

Special

[special interview]
原作ゲーム「ペルソナ4」橋野 桂ディレクター、TVアニメ「ペルソナ4」岸 誠二監督 [第2回]

TVアニメ「ペルソナ4」Blu-ray&DVD第1巻の発売にあわせ、原作ゲーム「ペルソナ4」橋野 桂ディレクターとTVアニメ「ペルソナ4」岸 誠二監督にお話しを伺いました。
ゲームとアニメでの作品の作り方・表現の違い、岸監督の「ペルソナ4」への思い入れ、橋野ディレクターのアニメに対する感想などを3回に分けて掲載いたします。
今回はその2回目です。 [第1回第2回第3回]

──アニメとゲームでは鳴上悠の立ち位置に大きな違いがあると思いますが、お二方はどのように捉えられていますか?

橋野  ゲームの場合は主人公がプレイヤー自身。なので「自分は一体なんなんだろう?」という感情は起こりません。むしろ、起こらないように作っています。ところがアニメの場合は自分自身ではないわけですから、「鳴上悠はどういう奴なんだろう?」という興味が湧いてくる。そこが大きな違いでもありますし、岸監督もここの部分はきっと悩まれたんじゃないかなぁと。完全にキャラ付けしてしまうとゲームのイメージを崩してしまうし、かといってずっと黙っているキャラにもできなかったでしょうし……。

岸  たしかに相当悩みましたね(笑)。この子はどういう人間なのかというところからスタートして、この子が持っているペルソナを使い分ける“ワイルドの能力”はどういう意味なんだろうというところまで考えるわけです。そして、さらにそこから逆算して“悠が今までどういう人生を送ってきたのか”というところに行き着いちゃうんですね。アニメ『ペルソナ4』という舞台で、彼が周りと絆を培っていく1年間のジュブナイルが描かれるのであれば、色々と掘り下げなきゃいけない部分がいっぱい出てきちゃうんですよ……。結果としてワイルドという能力のテーマ性と世界セッティングを考え、“非常に特異な子である”とこちらで解釈させてもらいました。

──これまで悠がどんな人生を送ってきたのかという部分は気になります。監督独自の解釈がアニメで描かれることはあるんでしょうか?

岸  あえて直接描写するということは避けています。ですが、お話の中に少しずつ紛れ込ませてはいますね。この解釈はもともとの設定とテーマから導き出される可能性のひとつではありますが、全編を通してみても大きくズレた方向には行っていないと考えています。

橋野  事前に打ち合わせはしていますが、その辺りの細かい部分は監督にお任せしているので、アニメの悠がどういう人間になっているのか僕自身も楽しみなんですよ。
先ほど、特異な子であるという話が出ましたが、たしかに序盤の悠の印象は“不思議なキャラ”だなぁと(笑)。

岸  そうですね(笑)。でも、だからといって誤解しないでほしいんですが、決して不思議ちゃんなわけでは無いんですよ!

──どことなく変わっていますよね。テレビの中に迷い込んでも冷静沈着な姿も印象的でした。

岸  冷静といいますか……。それならばなぜそんな風にこの子は振る舞えちゃうのかという部分にも理由があるはずです。もちろん、私の解釈はここでは明かしませんけど!(笑)ヒントを挙げるとしたら、ワイルドの意味する“数字の0のように”というところでしょうか。

──ペルソナを召喚したときにボタンを外したのもユニークです。

岸  私としてはあの動作にも意味を持たせているつもりです。いや、どちらかというと、ボタンを開けることよりもなんでその前に閉じてるのかという部分がカギですね。そういった彼の素性について考えながら見てもらえると、より作品を楽しめるんじゃないでしょうか。

 

──悠は戦闘シーンでもカッコイイですよね。

岸  やはり戦闘シーンは映像的なエンターテインメントのひとつなのでしっかりと描かなければなりません。アニメでは人間自身が一切手を出さずに、あくまでペルソナが戦うというのがポイントです。これは映像のシステムとゲームのシステムの相違ということになってきますが、武器を使って悠たちとシャドウを直接戦わせてしまうと、とても強い主人公像が生まれてしまうんですよ……。そうなるとペルソナは銃火器と変わらない存在になってしまい、その意義を失ってしまいます。

橋野  最初から自分で戦えたらペルソナ要りませんからね(笑)。

岸  まさにその通りなんです(笑)。自分自身の分身であるペルソナが、次々と現れる人間の影の部分と戦ってくれないとお話のテーマとしてもズレてしまいますし、それならば映像として沿う形にしようと。極力ハードな描写は控えるようにしていますが、人間が生身で戦っていたら下手すれば死にかねないシビアな状況ですし、シャドウはそこまで手軽な問題ではないんだぞ、ということをより強調させてもらうことにしました。

橋野  逆に、ゲームの中ではどちらかというとペルソナを記号的に捉えていますし、何よりシステム的な制約が多いので、戦闘シーンの具体的な描写を深く考えることはありませんでした。だからこそ、制約が少ないアニメの世界ではどうなるのか純粋にワクワクしています! イベントシーンとかはどう再現されているんだろうという見方をしますけど、こちらが全然手をつけていない部分に関しては見方が急に変わっちゃって面白いですね。

岸  アニメならではの見せ場ですから! 悠のペルソナ・イザナギに関して言えば、番長っぽく喧嘩アクションにしてやろうとか思っていたので、開幕の一撃で喧嘩キックをかましています(笑)。

橋野  “らしい”ですよね(笑)。ちょうど、『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』という格闘ゲームも制作中なんですが、そちらのアクションも凄く参考になるといいますか。「ハードの性能が上がったらこんな風に戦闘シーンで魅せたい!」という刺激を受けるんです。あと、キャラクターではありませんが、テレビの中の小西酒店でシャドウ陽介と戦っていたとき(第2話)にバタンと壁が倒れて気がつくとステージにいるというアニメオリジナルの演出。あれは某映画のシーンみたいでカッコ良かったですね。

岸  もともとゲームの世界観も受けているんですが、言ってしまえばあの異世界ってなにもかもが嘘じゃないですか。我々の設定の考え方で言えば、全部描き割りの舞台なんだと。だから、あんな風に壁がバーンと倒れて嘘だったということが露呈してしまう。

橋野  すごいですよね。普段僕らが考えていないところを、こうやってアニメーションの監督さんがしっかりと考えて繋いでくれるわけです。商店街なんかもこちらが描いてない部分や裏側までカメラが回ったりしますし、あそこは実はこうなってたのかぁって感心しちゃったり。

──ロケハンもしっかりとやられたんですか?

橋野  ゲームのモデルになっているロケーションについては、いの一番に聞かれましたね。

岸  それを参考にしつつ、さらに適切な場所を考慮させてもらいました。背景はとにかく練り込んでいますので、そこもぜひ注目を!

 

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