ペルソナ4

Special

[special interview]
原作ゲーム「ペルソナ4」橋野 桂ディレクター、TVアニメ「ペルソナ4」岸 誠二監督 [第1回]

TVアニメ「ペルソナ4」Blu-ray&DVD第1巻の発売にあわせ、原作ゲーム「ペルソナ4」橋野 桂ディレクターとTVアニメ「ペルソナ4」岸 誠二監督にお話しを伺いました。
ゲームとアニメでの作品の作り方・表現の違い、岸監督の「ペルソナ4」への思い入れ、橋野ディレクターのアニメに対する感想などを3回に分けて掲載いたします。
[第1回第2回第3回]

──今回は原作のゲームを手掛けたインデックス・橋野 桂ディレクターと、アニメ制作の監督を務められる岸 誠二監督にお話を伺います。 まず、岸監督は原作ゲームの大ファンということですが、とくにどういった部分に魅力を感じられたのでしょうか?

岸 うーん……あまりにもいっぱい魅力がありすぎてどれから言えばいいかわからなくなっちゃいますね(笑)。恐らくプレイしている最中に一番惹かれたのは“キャラクターたちの群像劇の面白さ”。遊んでいて、彼らの姿がとてもとても魅力的だったんだと思います。きっとあれで好きになる人って多いと思うんですよ! 結果としてどのキャラクターもすごく愛されていますし。

橋野  キャラクターの話になりましたが、実はゲームの開発ではキャラクターをピックアップして作り込んでいくわけではないんですよ。作品のテーマを元に、キャラクターも含めたゲームの部品を順番に作っていくだけで。具体的に言いますと、まずは主人公と周りのふたりから決めて、そこに加わっていく人たちの人物像を決める。でも、それだけだとダレちゃうんで決まったものにもドンドン盛っていく。その結果、だんだん変に……というか、面白くなっていくわけですね。

岸  変という意味で言えば、この作品のマックスは完二 ですか!?(笑)

橋野 マックスかどうかはともかく、完二は非常に個性的なキャラクターになったと自負しています(笑)。こういったキャラクターの造型は開発の過程で変化していくものなので、色々な要素が噛み合って、ああいった完二像に変化していったんです。ここに関してはアニメと制作の過程でとくに大きく違っている部分かもしれません。

岸 たしかに違いますね……。アニメの場合はスタートする時点でキャラクターのイメージを固定しますから。アニメというか、映像作品である以上は大体そういった作り方になると思います。

──本編のストーリーについて、岸監督はどんな感想を持たれましたか?

岸  「ゲームなのにシリーズモノのドラマのような作りだなぁ」と。連続殺人事件の謎を追うサスペンスという題材もそうだし、全体の流れもそう。さらにこれからアニメでも出てきますが“クマのとある変化”がちょうどテコ入れのようなタイミングで来ると(笑)。本当によく出来ているんです。

──アニメ化を意識して、ゲームをそういう作りにしていたり?

橋野  いえいえ、それはさすがに無いですよ!(笑) アニメ化されるなんて夢にも思っていませんでしたし、だからこそ話を伺ったときはあまりに意外すぎて「どうなるんだろう?」という気持ちで。良くも悪くも僕らはゲーム屋なので、アニメになるのならどうなるだろうとか、アニメの監督さんがどういう風にいじるのかなとか、そういう好奇心に気持ちが持っていかれてしまって……。そういう意味ではユーザーの人と同じ感覚なんじゃないかと思ったので「もう好きにやっちゃってください。どんな協力でもしますから」とお任せしたんです。

岸  ところが、今度はこちらが「それは嫌です!」って(笑)。原作のあるアニメではよくある話かもしれませんが、話の大筋をイジられるのを嫌うファンって多いんです。そうなると「この作品、こんないいとこあんのになんで変えんねん! スタッフはわかってへんにも程がある!」という怒りの声も出てくるわけで……。もちろん、原作ファンの自分としてもオリジナル要素ばかりのアニメ『ペルソナ4』なんて見たくない! 映像として足さなきゃいけない部分や、やらなきゃいけないルール改変はあるかもしれないけど、根本的な部分は一切変えたくありませんでした。

──ゲームとアニメの世界観を統一することに気を遣われているんですね。

岸  そこだけは絶対に譲れませんって!(笑) 手を加えたがゆえに、根本的な世界観を歪めてしまったらどうしようもないじゃないですか。例えば、冒頭のイゴール は特別出演という形で、ゲーム版で声を当てていらっしゃった故人・田の中勇さんの音声をそのまま使っています。別の声優さんを使うこともできたんですが、違う声が流れてきたらガッカリ感があるでしょ? 「残念だけど、しょうがないよね……」で始まるアニメの第一話なんて冗談じゃありませんよ!

──たしかにそうですよね……。

橋野  監督の熱意は凄まじいものがありますね(笑)。私はまだアニメの序盤しかチェックできていないんですけど、映像からもそういう想いが伝わってきました。自分を始め、モノを作っている人間ならどういうことを吐き出したくて絵が作られているかというのがなんとなくわかるんですね。そして、そこにある意図が良かれ悪かれ筋が通っているかどうかで“作品の味が出るか否か”が決まるような気がします。その味つけが好きか嫌いかで意見は分かれるところですが、私自身はこのアニメの狙いを味わえたので、嬉しい気持ちで見ることができました。

岸 いや、そう言ってもらえると光栄です!

橋野  これは岸監督が狙っている部分だと思うんですが、アニメとゲームでは随分と展開が違っているんです。なのに、じっくり比較しないとどこが違うのかわからない線を押さえているのは面白いなって。物語を構築した開発者でなければ感じ取れない微妙な違いかもしれませんが、僕らの作ったものが、別の誰かの視点によって、ゲームではないメディアで再構築されているわけで、本当に“不思議な体験”をさせてもらいました。

岸  “体験”というのは制作サイドとしてもすごく納得のいく表現ですね。ファンの方はこのアニメを見て「ゲームをやっているみたい」と思うかもしれませんが、橋野さんがおっしゃる通り、ゲームをやってみると結構展開が違うんですよ。でも、印象に関して言えば、きっとゲームそのままなはず! 完璧な再現は不可能でも“同じようなストーリーや絵的な流れ”は作れるわけで、そうなるとあとは印象の問題になってくるんです。

──ゲームと同じ印象を持ってもらうことが大事だと。

岸  もちろん、アニメでそのまま出せる部分には手を加えません。自宅で菜々子と悠の座っている位置 なんかも完璧にゲームを踏襲していたりしますし(笑)。映像というエンタメとしてゲームとは違う体験をしてもらいつつも、世界観を皆さんに楽しんでもらえるよう、考慮しています。

 


橋野  やっぱりアニメとゲームは違うものなんですよね。第1話は、冒頭の綺麗なベルベットルームのシーン、そして堂島や菜々子が出てきた辺りでは「ゲームのプレイバックだな」と感じたんですが、その後、ゲームでは喋らない主人公・悠が車の中でボソッとひと言呟いた ところがアニメとゲームでの分岐点になったなって。その分岐点こそがまさにアニメーションでの“鳴上悠の物語の始まり”なんだと感じました。

 

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